【ECI方式の現状と課題とコストマネジメント(その1)】
✔ECI(アーリー・コントラクト・インボルブメント)方式
“ECI(アーリー・コントラクト・インボルブメント)方式”とは、設計段階から施工者がプロジェクトに参画し、施工者が持つ様々なノウハウを取り入れて、設計者が実施設計を行う方式です。
“DB(デザインビルド)方式”とのわかりやすい区別としては、発注者は設計者(この場合、組織事務所のような設計専業の会社が多い)と基本設計・実施設計の契約を行いますが、これとは別に施工会社と“技術協力者”として業務委託契約を結びます。
施工者の持っている施工ノウハウを設計段階から活用する方式は、民間の工事では多く採用されていますが、公共工事でも改正品確法により採用できるようになりました。
民間工事と異なるのは、技術協力者になる施工者に対して、フィーを支払う契約を行う点になります。
民間工事でも払えない訳ではないですが、設計内容に施工者提案を受け入れてもらえるメリットがあることから、無償で技術協力を行うケースが一般的です。
また、実施設計後に工事金額が合意できない状況が生じることを避けるために、技術協力者を特定する時点で、「目標工事費内で工事請負契約が行えるように技術協力する」との合意を行います。
従来であれば、発注者と設計者のみで、設計会議が進められますが、施工者が技術協力者として参画し、三者協議として設計内容の詳細検討が進められることになります。
✔ECI方式の現状
ECI方式についてもDB方式と同様に、2011年度以降、東日本大震災発生後の復興需要、2012年度末~13年度末に編成された補正予算、東京五輪を見据えた大型建設工事の増加等の影響で建設投資の増加よる建設業界における人手不足と需給関係の逆転により建設コストが上昇するなどの背景のもと、早期にコスト・工期のコミットメントを取り、事業コスト超過やスケジュール遅延を防止する必要のある多くの事業でECI方式が採用されています。
特に公共工事では、建設コストの上昇に伴い予定価格と実勢価格に乖離が生じたため、被災地をはじめとする多くの公共工事で入札不調・不落が発生しました。
そのような状況の中、2014年6月4日「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」(改正品確法)が施行され、事業の特性に応じて選択できる多様な入札契約方式の導入・活用が示され、公共工事の発注方式の中で『技術提案・交渉方式(品確法18条”技術提案の審査及び価格等の交渉による方式”)』が採用できるようになりました。
改めて、技術提案・交渉方式とは、大災害からの復興事業や施工的な技術的難易度が高い工事などに施工者独自の高度で専門的なノウハウや工法等を活用するはことを目的としており、設計・施工一括タイプ(設計と施工を一括で契約)、設計交渉・施工タイプ(設計と施工を個別に契約)、技術協力・施工タイプ(施工技術を設計に反映した後に施工を契約)の3タイプがあります。
その中で、ECI方式は“技術協力・施工タイプ”となり、設計や施工の難易度が高く、発注者や設計者だけでは仕様や施工条件を確定できない場合に適用されるものとなります。
✔ECI方式の特徴
ECI方式では施工のノウハウを設計に反映することにより工事費の縮減や工期短縮を図れることが大きなメリットとなります。
早期にコスト・工期のコミットメントを取る契約方式にはDB方式もありますが、施工者視点に偏った設計となる場合があるなどDB方式の懸念事項もあり、発注者は事業特性に応じて双方のメリット・デメリットを比較検討し契約方式を決定しています。
建築計画やデザイン性を重視する場合やDB方式のデメリットを懸念する場合はECI方式を採用し、コスト低減・工期短縮を重視する場合はDB方式を採用する傾向があります。
公共工事では公募型プロポーザル方式にて選定された優先交渉権者(以下、「施工者」という)と基本協定締結(目標工事費の確認等)及び技術協力業務委託契約後、施工者が設計段階から設計作業に参画し、技術協力者として施工のノウハウを設計に反映します。
導入時期は基本設計終了後、実施設計開始前が一般的です。
施工者が技術協力者として、設計に深く関与することになる訳ですが、あくまで設計者は設計に対する責任を負い、施工者は技術協力及び施工に対する責任を負うこととなります。
実施設計完了後は発注者と施工者で価格協議を行い、合意に至れば見積合わせを行い随意契約で工事請負契約を締結します。
万が一、合意に至らない場合は当該プロポーザルでの次順位者と協議ということになるかと思いますが、その時点で既にプロポーザルから一定の時間が経過していること、実施設計が完了していることから、少なくともプロポーザル時から内容が変化していることなどから、次順位者と言えども、合意に至るのは現実的にかなり難しいと想定されます。
そのような状況にならないように、設計者・施工者・発注者といった全ての関係者が最大限の注意を払いながら、設計を進めていくことが肝要です。
一方で、建設会社側から見た場合、昨今の建設業界の繁忙に伴い建設会社設計部も同様の状況であり、各建設会社の状況によってはDB方式よりECI方式が好まれる傾向があります。
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