【建築設計者でも無い僕がBIMを始めた理由】
建築業界で仕事をはじめてから、もう26年になります。
一応、一級建築士で"設計者"を名乗ることもできるのかな(苦笑)?
しかし、資格はあるけど、僕は"設計"はできません。
単純に"経験"が無いんです。
僕のキャリアは、"ゼネコンの現場"から始まりました。
以降、調達・購買業務も経験し、今のプロジェクトマネジメント・コンストラクションマネジメントの仕事に至ります。
建築業界って、本当にいろいろな役割・能力を持った人達が集まり、力を合わせて建物を造ってるんですね。
設計者は、"そのひとり"ということになります。
で、僕は設計では無く、現場で建物を造る役割を中心に仕事をして来ました。
そして今は、建物を造るというプロジェクトをクライアント(施主)側で、クライアントをサポートする役割を担っています。
設計と言えば、今は"CAD"を使って図面を描くのが主流になっています。
僕は躯体図を手描きで描いたことのある最後の世代の方だと思います。
僕の現場には『施工図屋さん』というCADを扱うスペシャリストがいました。
当時の僕からしたら、彼等は完全に特殊能力の持ち主でした。
そして今は「だいぶBIMが普及してきた」というところですかね?
まだまだの感じは多分にありますが。
CADもほとんど触ったことも無かった僕ですが、実はBIMには10年以上前から注目していて、多少触ったことがありました。
BIMを知った時に『これはすごい。関係者、何よりクライアントの意思決定が大幅にスピードアップできるぞ。』と直感的にそう感じました。
そこで、BIMに精通しようと思ったんですが、当時の僕の環境が整わなかったのと、元々設計畑で無いので、そもそもBIMを活かすような仕事が回って来なかった、取りに行くことも無かったということで、全くBIMに縁が無いまま、ここまで来てしまいました。
そんな僕が改めてBIMに取り組もうと思い、チャレンジを始めました。
ちょっと大袈裟だけど、ほぼ何も知らない・わからないところからのスタートなので、"壮大なチャレンジ"です。
何故、今"BIM"なのか?
実はその根底には、建築とはあまり関係ない理由があります。
その理由とは、『僕の弱点』に関係があるんです。
僕が思う僕の弱点とは、『ひとりでは何も生み出せない』ということです。
生み出すというのは、単純に言えば"作品"ということですね。
今の仕事はやりがいも充実感もあるけど、クライアントがいて、設計者や施工者がいて、同じチームのメンバーがいて、初めて自分の役割と居場所がある。
裏を返せば、"自分ひとりでは何もできていない"ということ。
いつからか、そう考えるようになったのです。
画家・作家・音楽家といった人達はいわゆる"自分の作品"というものを作り上げ、発信し、世に残しています。
完全に"ひとりで"ということでは無く、スタッフだとかサポートする人がいるかも知れませんが、ただ、根本の部分は"圧倒的な個人の創造力"によるものだと思います。
"作品を生み出す"
ここが全くできていない今の自分が、何かとても弱いものに感じ、ある意味、危機感を感じました。
『何か出来ないかな?』
建築家も"作品を生み出す人"になるのでしょうが、実際に造るとなると、個人の力では住宅くらいの規模が限界で、大きな建物をイメージできたとしても自分ひとりでは造ることはできないでしょう。
でも、絵(図面)として、模型として、何かしらの形にする・表現することで、自分のイメージ・考えを世の中に伝えることはできます。
『僕のイメージする空間を表現したいな』
そんなことを思いました。
設計者じゃないからといって、空間に対して、建築設計に対して、何も考えない訳では無いんです(苦笑)。
むしろ、設計技術の常識や先入観が少ない分、『もっとこうすれば良いのに』と単純な発想が出てくるのでは?
そんな気がします。
だけど、思いとは裏腹に僕は絶望的に画力が無いんですね(苦笑)。
おまけに、模型とかで表現する手先の器用さも無い。
だけど、イメージがあることは、"僕だけは知っている"(笑)。
その僕のイメージを表現してくれるのが"BIM"だと。
『このツールは僕のイメージの表現を助けてくれる』
改めてそう思いました。
でも正直、今まではBIMやCADといった自分をサポートしてくれるツールからも逃げていました。
『難しそうだな』『面倒くさそうだな』と。
だけど、自分の弱点を見つめ、自分のやりたいことが見え、それを助けてくれるツールをしっかり認識した以上、『やるしかないな』と思いました。
ヨチヨチ歩きですが、何とか頑張って始めてみると、とても楽しいです。
幸い"今はまだ"楽しい(笑)。
だけど、どんどん高度なテクニックや修錬が必要になると思うので、すぐに厳しくなることは目に見えています。
自分との戦いですね。
だけど、今までできなかったことができるようになった自分を感じるのはとても楽しい。
知らなかったことを知った自分を感じるのは楽しい。
"確実に成長しているな"という自分を感じるのはすごく楽しい。
全然仕事で使えるレベルには程遠く、また、そのレベルまでいけるか全くわからないけど、自分なりに可能性は感じています。
『ひとりでも何かを生み出せる自分になりたい』
ですね。
とても楽しみです!
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諏訪寛 (著) 形式: Kindle版